綾がにこにこしながら、向井さんと話している。山形とも普通に接しているし、ほんとに大丈夫なのかな?

「綾、もっと飲む?ビールでいい?」

「はい、ビール注文しますね。先生は、何にしますか?」

「俺もビール。アルコール大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。結構飲めるので。大学の時に部活の男子たちより飲んだくらいです」

「部活、そういえば何してたんだ?」

「バスケ部ですよ。大学は薬学部なので、男子が少なめで、男女一緒に練習してるような弱小部ですけどね」

「俺たちもバスケ部だったな。お前ちびなのに、すばしっこくて、相手にするのはめんどかったわ。」

「あっ、私もバスケ部だったんです。でも、マネージャーだったんですけどね。」

「みんな、バスケ部だったなんて。すごい偶然ですね。私は、背がでかいので、男子に混ざってよく練習してましたよ。」

「綾さんは、身長何センチなんですか?」

「うわ~それ聞かれちゃうか~。自称169です。」

「169・・・」へこむ・・・俺より、背が高い・・・

「私は、148です・・・169センチ憧れます。かっこいいです!」

「20センチも違うのか・・・隣には、立てないわ~」

「俺190。でかすぎて、いろんなところに頭ぶつける。」

「わかります。私もちっちゃい時からでかいのに、ぶつかっちゃいます」

「いいな~かっこいいな~私は、ずっと小さいです。前ならえは、いつも手を腰です!」

「私は、運動会の時の背の順の時だけ、手に腰だよ」

「俺も」



身長の話で盛り上がるなよ・・・

その話は俺には禁句だ。



「宮野は?」

チッ。山形のやつ。俺が、その話したくないのは知ってるのに、聞いてきやがった。

「言わん!!」

「かわいいやつ。こいつ。身長のこと話題にすると無言で不機嫌になるから。」

「うるさい」



綾は、背の高いやつが理想だっていつか言ってた。

今は、山形のことがあって俺と一緒に痛いって言ってくれてるけど、いつかちびの俺が嫌になるかも。

と、ちょっとへこんでると

「そういや、前に綾ちゃんって180以上じゃないと無理って言ってなかったっけ?」



おい、山形いらんこと言うな。

綾が俺の身長で無理って言い出したらどうしてくれるんだよ。



「はい、前は自分がでかいので180以上の人じゃないと一緒に歩いてくれないと思って。でも、今は、一緒にいてくれて、私のことが好きでいてくれて、私も大好きな人と付き合っていきたいと思っています。」

と、俺の方をちらっと見た。

俺でいいのか?身長はもう気にならないのか?



「そっか、身長は関係ないか。よかったな宮野」

「うるせー」

「肩が組めなくても、手をつないで歩けますから。」

「逆に俺たちは手つなぐ方がつらいな。」と、山形。

「はい、ずっと手あげてないといけないので、手つなぐのは辛いです。」くすっと笑う向井。



隣に座る、綾の手をそっと握ってみた。

ずっと、手、つないでいたい。そう思った。