「でも、わたし・・・」

話そうとした私の唇に、柔らかなものが触れた。一瞬触れて離れたと思ったら、すぐにまた触れ、何度も何度も角度をかえ、触れた。

キスされてる・・・

心臓が・・・壊れそう・・・



「み・やの・せんせ・・い・・・まって・・・まって」

「ご、ごめん」

ぱっと、離れた宮野先生は、耳まで真っ赤になっていた。

私も、きっと真っ赤だ。心臓はバクバクして、壊れそうにはねてる。



「ごめん、でも、俺。加藤のことが、綾のことが好きなんだ。綾が、山形のことが好きなのは知っている。

でも、俺は、綾が好きなんだ。綾って呼んで、抱きしめたいんだ。俺じゃダメか?山形のこと好きでもいい。俺をそばにいさせてくれよ。綾って呼ばせてくれよ」

「まって、まって。まって・・・わからない。どうしていいのかわからない。私にはわからない。」

「ごめん、急にこんな話して、体調が悪いのに。余計、悪くなっちゃうよな。ほんと、ごめん。でも、今日は、一人にはできない。なにもしないから。ここに泊まって行って。心配なんだ。ほっとけないんだ。一人にして、また、泣くかと思うと、また、倒れるかもって思うと無理なんだ。だから、ここに泊まっていけ」

「・・・・・」

「とりあえず、部屋入って・・・」



私たちはまだ玄関にいたことに気づいて、部屋の中に入った。

宮野先生のうちに来るには2回目。あの、忘年会の日以来だ。

ソファーに座らされ、

「飲み物取ってくる」って、私から離れた宮野先生のことを見送ることもできず、ぐちゃぐちゃの頭の中を整理することもできず、ただソファーに座っていた。