仕事納めの12/30

病棟で、斎藤さんに薬の話をしながら、痛みの様子や、胃痛のことを聞いていた。

痛みは、徐々に悪化し、痛み止めは増量されてきている。

痛み止めで吐き気と便秘もひどくなり、薬は増えてきている。

でも、斎藤さんは、あまり、辛そうにしてはいない。辛いだろうけど、顔に出さないようにしているのだ。

癌は悪化し、あまり予後はよくない。先生の診断では、年を越せるかどうかと。

でも、意識もはっきりしているし、そんなに悪くないのではと思ってしまう。

「綾ちゃん、最近元気ないね。失恋でもした?」なんて、私の心配をしてくる。

「いやいや、いつも元気いっぱいですよ。失恋なんて。私の恋人は仕事なので、失恋なんてしませんよ」

「いやー。山形先生の結婚話聞いたからさー。綾ちゃん、山形先生気になってただろ」

「えっ?」

「クスッ見てればわかるよ。山形先生が来ると、ちょっと赤くなるんだよ。かわいくね」

「かわいくないです。そんな観察いらないです!」

「まあ、綾ちゃんはかわいいからすぐに次のいい人見つかるよ。案外近くにもういるかもね」

意味深な言葉に、ニヤニヤする斎藤さん。

「もう!斎藤さん!私、次に行きますよ。今日は仕事納めだから、次にここに来れるのは、年明けです。

年越し当直はするけど、きっと、忙しいから病棟には顔出せないと思うんで。」

「そっか、年越し当直か。頑張れよ。また、来年よろしくね」

「はい、じゃあ、また来年。よいお年を。」





病棟の入院患者さんに、「よいお年を」はおかしいかな?と、思いながら、病室を後にした。