こんな恋の話【短編集】






沈黙が続く。


さっきからすずは何も言ってこない。


泣いてくれてるのかも。


悲しんでくれてるのかも。


そんな期待を抱きながら、チラリとすずを盗み見る。


そこにあったのは、目を見開いて、ただただ驚いたような顔をするすずだった。


「すず…?」


震える声で呼び掛けると、すずはびくっとしてから俺を真っ直ぐ見つめてきた。


澄んだ綺麗な瞳。


長いまつげ。


愛しい。


手放したくない。


嫌って言って。


俺にすがりついて。


放さないと言って。


俺の胸に飛び込んできて。


そんなことを願って、ただ彼女の目を見つめ返した。


でも…




「……わかった。今までありがとう。じゃあね、バイバイ、陽二くん。」








キミは笑って去っていった。


胸にポッカリと穴が開いてしまった。


もう


痛みすら


感じない…