こんな恋の話【短編集】






「藤堂。」


「大くん…」


「いいの?さっきの、冬矢だろ?」


「でも…」


「逃げるなよ。」


「へ…?」


「もう、わかってんだろ?自分の本当の気持ち。もう、誤魔化して逃げたりするなよ。

藤堂はさ、確かにかわいくなったと思う。でも、俺は思うんだ。メイクしたり、服を変えたり。そうやってかわいくなったわけじゃないって。

俺は、冬矢の話をして楽しそうに笑う藤堂が好きだ。冬矢の隣で幸せそうに笑う藤堂が好きだ。
そう思うくらい、藤堂はかわいいよ。アイツの隣で。」


「大くん…」


大くんの言う通りだ。


あたし、冬矢のこと考えると自然と笑顔になる。


幸せな気持ちになる。


「大くん…。ごめん。」


頑張れよ。


そう、聞こえた気がした。


大くんが本当にそう言ったのかどうかはわからない。


その時にはもう、走りだしていた。