こんな恋の話【短編集】






さくらは静かに聞いていた。


俺の話を静かに、黙って。


さくらは気づいたか?


鈍感なさくらだから、わかってないかもしれない。


でも。


きっと何か感じてくれたはずだ。


はっきりとした言葉でつたえられないのは、俺が魔法使いだから。


意気地なしの弱虫魔法使いだから。


「これが俺の“もしも”の話。
聞いてくれてありがとな。さくら。頑張れよ。じゃあな。」


『冬矢、あの…


ブツッ




一方的に切った電話の向こうからは、もう何も聞こえない。


終わった。


俺の仕事はすべて終わった。


上手くいった…かな。


一応。


もう心配はいらない。


大丈夫だ。


じゃあ。


俺もあの場所へ行こうか…


すべてが始まったあの場所へ…


このおとぎ話の結末へと…


さくら。


俺にも魔法使い、現れるかな?


あの場所に行けば、会えるのかな?


でも。


今はまだ、会いたくはない。


今はただ、キミを想っていたい。


今はまだ、捨てきれないこの想いを。


今はただ、温めたい。










      冬矢Side 《END》