こんな恋の話【短編集】








シンデレラは王子様を好きになる。


でも、どんなに努力しても、王子様は振り向いてくれない。


そんなシンデレラを、魔法使いは励まし続けた。


どんなに泣いても。


どんなに怒っても。


どんなに振り回しても。


魔法使いは文句一つ言わないんだ。


何故だと思う?


その答えは一つ。


魔法使いはシンデレラが好きだったんだ。


だから、シンデレラを純粋に応援することができなかった。


だから12時までなんだ。


魔法使いは意地悪なんだ。


最後の最後、シンデレラの背中を押してやれない。


でも…


それでもやっぱり裏切りきれなかった。


だから魔法使いは靴を落とした。


シンデレラの靴を片方、会場に残させたんだ。


シンデレラが気づかなかったのは魔法のせい。


魔法使いが魔法を使ったせい。


そのおかげで、シンデレラは王子様と結ばれる。


幸せに暮らすんだ。


そんなとき、魔法使いはどこにいたと思う?


きっと、思い返していたんだよ。


すべてが始まったあの場所で。


あの日のことを。