こんな恋の話【短編集】






さくらは俺のこと、何も知らない。


協力すると言ったくせに、素直に応援できない。


応援してやりたいのに純粋な気持ちで応援してやれない、その葛藤も。


諦めたいのにどうしても諦められない、この気持ちも。




“もし、大くんがいなかったら、あたし冬矢のこと好きになってたと思う”


何も知らないで、簡単にそんなセリフを吐く。


なら、俺を好きになれよ…


何度も、何度もそう思った。


“もし”


なんていらない。


“もし”


なんてそんな仮定はいらない。




わかってる。


“もし”


は、あくまでも


“もし”


なんだ。


さくらの現実の中で、俺はそんな対象じゃないんだ。


だから簡単に


“もし”


なんてことが言えるんだ。