こんな恋の話【短編集】






その日は、結局何も言うことはできず、潤クンは帰っていってしまった。


自分の決意の脆さと情けなさに、ため息ばかりが漏れる。


「潤…クン……」


名前を呼んだって応えてくれる本人はいないのに。


何度も何度も呼び続けた。


自分の中にある、恐怖と不安を取りのぞくために。


何度も何度も名前を呼んで。


何度も何度も潤クンの優しい笑顔を思い浮べて。


瞼の裏に深く深く刻みつけた。


目を閉じれば大好きな笑顔がいつでも浮かぶように…


私のこの目が光を失っても、決して忘れてしまうことなどないように…


私の記憶から、消えてしまうことなどないように…