こんな恋の話【短編集】






「ねぇ、潤クン…」


「ん?」


私の声に、潤クンは雑誌に向けていた顔を一瞬顔をあげると、すぐに雑誌に目を戻した。


「何?」


「もう、春だね…」


呟くようにそう言うと、雑誌をめくる潤クンの手がピタッと止まった。


「そうかぁ?まだだよ。まだ寒いし。三月入ったばっかじゃん。」


「………」


「そ、そんなことよりさ、何か食べない?あ、俺、何か飲み物持ってくるわ。」


目を泳がせながら早口でそう言うと、スッと立ち上がり部屋を出ていってしまった。


ドアの閉まる音が


パタン…と虚しく響いて。


「別れよ…」


言えなかった言葉は


一人ぼっちの部屋に、こだました。