「はぁあ〜。また泣いちゃったじゃん。お前が慰めてやれよ。俺、もう帰るわ。じゃあな、七瀬。」


最後にニコッと微笑んで、遠藤は帰っていってしまった。


教室に二人きり。


しばらくして口を開いた祐希は、


「実胡…」


弱々しく私を呼んだ。














優しく私の頭を撫でてくれた遠藤の手を、温かいと思った。


この人の前でなら素直になれるって、本気で思った。


でも…


「俺、幸と別れてきた。

…もう、わかってると思うけどさ?俺、実胡のこと好きなんだ。ずっと。」


「フッたじゃん。昔。」


「あ、あれは…俺の友達がお前のこと好きで…。だから…」


泣きじゃくる私に差し出された祐希の手を、離したくないと思った。


素直になれなくても、この人ならわかってくれるって、そう思った。


だから…


「私ね?」


ちょっとだけ、素直になってみる。


「祐希が好きなの…」


真っ赤になって俯く私に、祐希は少し頬を染めてニコッと笑った。


あの時と同じ眩しい笑顔で。