こんな恋の話【短編集】






「七瀬?」


もう帰ろうかとカバンを取りに行くと、クラスメイトの遠藤が教室に入ってきた。


「あれ、目赤いぞ?」


大丈夫か?


そう言って心配そうな顔をする遠藤を見た瞬間、止まっていた涙がまた溢れだしてきた。


「ヒッ ヒッ…… もう…嫌だぁ……」


子どもみたいに泣きじゃくる私を宥めるように、遠藤は優しく頭を撫でてくれる。


温かいと思った。


「またアイツだろ?」


えっ?


そう言ったはずなのに、声が出なかった。


ただ目だけで驚きを訴える私。


そんな私を優しく見つめ、言葉を続ける遠藤。


「俺、知ってるから。お前がアイツを好きなのも、お前がいつも辛そうなのも。


……俺の方がわかってやれる。お前のこと。だから……」


この人なら、私を笑顔にしてくれる。


この人の前でなら、きっと素直になれる。


本気でそう思った。












でも…









「おい!!」