こんな恋の話【短編集】






「陽二くん、大丈夫?おでこ、痛かった?」


帰り道、ふとおでこに手をあてた彼を覗き込む。


昨日のデコピンがそんなに痛いはずがない。


そんな疑問を抱きながらも、あえて何も聞かない。


それがもし、あたしじゃない誰かに負わされた傷だったら。


それが女の人だったら。


そう考えると怖くて、あたしはいつもちょっとしたことが聞けない。


「へーき。」


そう言って優しく微笑むと、彼はすぐに前を向き直し、沈黙が続いていた。


何を考えてる?


何を思ってる?


何を…誰を見てる?


誰を想ってる?


溢れだしそうな想いに蓋をする。


ダメ。


言ってはダメ。


聞いてはダメ。


そんなことをしたら、きっと終わってしまう…