「テメェなぁ!」


あ、あれ?
もしかして口に出てた?

言わないつもりだったのに。
私は慌てて口を押える。

あ、殴られる。
自称先輩のモヒカン男が拳を
振り上げるのを見て目を瞑る。

やっぱアザできるかな――


「…?」


痛みが全くない。
私は恐る恐る目を開けた。


「女子に暴力ですか?せ、ん、ぱ、い」


にこやかーな口調で
爽やかに煽るのは、

色白小顔、灰色がかった猫毛の髪、
切れ長でまつ毛の長い目と
綺麗な鼻筋――

そこら辺の芸能人より
顔の整った美青年。

背がスラッと高くて
針金みたいに華奢な体格なのに
その人はモヒカン先輩の拳を
片手で受け止めていた。