少しでも踏み外せば 地面へ真っ逆さまだ。 「ちょっと…」 やめなよ。 言おうとした時だった。 彼女は眉をキッと上げ 「逃げたのは そっちのくせに」 彼女の黒い髪が 風でユラユラと揺れる。 逃げてない。 そう言い返そうとした時だった。 彼女が回れ右をし、 屋上から飛び降りた。 「なっ――柚月(ゆづき)!」 私は咄嗟に手を伸ばすが 届かない。