破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします


(なぜ俺が……)


今までの宿泊を経て、ザックは知っているのだ。

アーシェリアスが低血圧気味で声をかけてもなかなか起きないのを。

鍵がかけられているので、最初の二、三日はひたすら扉の外から声をかけていた。

しかし、それでも起きてこないので放置し、アーシェリアスが起きてくるのを待つようになった。

今回はノアに頼まれたので部屋の鍵はかかっていないだろうが、近くで声をかけたくらいで起きるのだろうかとあまり期待せずに髪の毛を整えてから隣の部屋に入る。

どうやらシーゾーはすでに起きていたらしい。

布団をかぶって眠るアーシェリアスの隣で、新しく生み出した食材を手におとなしく座っている。


「おはよう、シーゾー」

「モフー」

「それはなんだ?」

「モーフ」


どうぞ、と言っているのだろうとザックは予想しながら差し出された食材を受け取った。

透明な袋の中に入っているその食材はパッと見は黒い。

そして両手のひらに収まらないほどの大きさで四角い形をしている。


(ん……? よく見ると少し緑っぽいか)