破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします


「果物なんて荷台にあったか?」

「実は酒場で買ってきたの」

「酒場に? ひとりでか?」


ザックの眉間に皺が寄る。

けれど、それは不快感からではなく心配からくるものだ。

そのことを感じ取ったアーシェリアスは、申し訳なく思い頷いてから「ごめんね」と謝る。


「大丈夫だったのか?」

「うん。声の大きなマンゴー中毒の騎士様にマンゴーをあげたくらいで、あとは何もなかったよ」


酒場で出会った騎士のことを話すと、ストローを咥えようとしていたザックの動きがまた止まった。


「声の大きいマンゴー中毒の……騎士……?」


アーシェリアスの言葉を繰り返すザックは何やら思案顔だ。


「ザック? どうかしたの?」

「ああ、いや。何でもない」


何でもないようには見えなかったが、あれこれと詮索するのは好きでないアーシェリアス。

ザックがスムージーを飲んで美味いと言ってくれたのを素直に喜び、また明日とノアの待つ部屋へと戻ったのだった。