破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします


「あの。ひとつで良ければお譲りできますよ」


マンゴーを手にして差し出すと、騎士はアーシェリアスを見下ろし茶色い瞳を輝かせ驚きに染めた。


「いいのか?」

「はい。念のためにとひとつ多めに買ったので大丈夫です」


アーシェリアスがにっこり笑むと、騎士は破顔しマンゴーを受け取る。


「ありがとう! 俺は一日にひとつはマンゴーを食べないとダメなんだ」


毎日食べるほど好きならば、先程の落ち込みようは理解できるとアーシェリアスは得心した。


「お役にたてて良かったです」

「それで、いくらだ?」

「あ、お代はいりません。騎士様方はファーレンの守り手。いつも守ってくださっているお礼です」

「君は……! なんといじらしい! マンゴーのレディよ。俺はファーレンを、君の毎日を、これからも変わらず守ると誓おう」


大げさに喜んでマンゴーのレディことアーシェリアスの肩をバシバシと叩いた騎士。

アーシェリアスは苦笑いしつつ、何度も礼を口にする騎士と別れて厩舎へと急いだ。