先日お世話になったブリーランの酒場より店内の雰囲気は落ち着いている。

すぐ近くのテーブル席では、カードゲームに興じている男性がふたり。

アーシェリアスは、ブリーランで酔っ払いに絡まれたことを思い出し、今回はそうならないようにと少し気をつけつつ店員の立つカウンターへ移動した。


「すみません」


声をかけると、店主と思しき中年男性が彫りの深い顔に皺を作って微笑む。


「いらっしゃい、お嬢さん」

「このリストのものが欲しいんですけど、ありますか？」

「どれどれ……ああ、これならあるよ。ちょっと待ってな」


男らしい太い声で言うと、店主は店の裏手にあるパントリーへ入っていった。

そして、茶色い紙袋に入れた食材をアーシェリアスに見せて確認する。


「ほうれん草にオレンジ、マンゴーとバナナ。数が合ってるか確認してくれるかい」

「はい！」


渡されたずっしりと重い紙袋の中身をチェックし、お金を払ったアーシェリアス。

あとはホロ馬車の調理器具を使って作るだけと、店主にお礼を告げ、踵を返そうとしたのだが。


「わっ、ぷ」

「おっと。失礼、レディ」

「こちらこそごめんなさい」


確認不足のせいで人とぶつかってしまった。