破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

確かにスターフルーツはファーレンでも南の方でしか栽培されない果物なので、地方によっては珍しい。

カットすると星の形を見せるのも他のフルーツでは見られない特徴だ。

しかし、幻かと言われたら北方の王都でも手に入れることができる時点で違う気がしているアーシェリアスに、ノアは頷いた。


「崖ギリギリにあって取るのは命がけ。なかなか取れないから、幻の果実と呼ばれてるんだよ」

「ええええええええ!?」


そう意味かと、アーシェリアスは地面にへたり込む。


「ザック……知ってたの?」

「知ってたら話してない」


それはそうだと、項垂れるアーシェリアスの側をシーゾーが慰めるようにモフモフ言いながら飛び回る。


「はぁぁぁ……」


そもそも、幻の料理と関係があるのかわからないものではあった。

けれど、少し期待していたのだ。

これが最初に一歩になるのではと。


「やっぱりそう簡単に幻の料理に辿りつけないのね」

「最初はうまくいかなくても、諦めなければ辿りつけるさ」


ザックに励まされ、アーシェリアスは力なく頷くと一度だけ深く息を吐き出してから立ち上がった。


「そうね! 次がある! これで旅が終わるわけじゃないんだから!」


明るい声を出しガッツポーズで告げると、ザックが口元に笑みを浮かべて頷いた。