破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします


「ザック! 私が爆弾を投げて目くらましするから、その隙にカプロスたちを成敗して!」

「爆弾ってなんだ!?」


そんなものをいつ入手していたのだと驚くザックに、アーシェリアスは鞄の中に手を入れて答える。


「小麦粉爆弾よ!」


こんなこともあろうかと、アーシェリアスは鞄の中に袋詰めした小麦粉とコショウを持ってきていた。


(視界を奪えば最悪逃げる時間は稼げるはず!)


シーゾーが「モフーッ!」と飛び回り、今さっき突進してきたカプロスが再び突っ込もうと後ろ足を蹴り上げ助走をつけていることをアーシェリアスに教える。


「ザック! そっちのカプロスAは任せたわよ!」


そう言って、いくつかの子袋を抱えたアーシェリアスは少女の方へと走り出した。

「カプロスAってどいつだ!」と言いながらも、ザックはカプロスAと思わしき先ほどのカプロスの足をうまく切りつけて動きを封じると、急ぎアーシェリアスの後を追う。

そんなふたりの様子を、少女はカーシーの背後からハラハラしながら見守っていた。

正確には、まったく強そうに見えないアーシェリアスの動向を。


(子袋を抱えて何をするつもりなのあのお姉さん!)


アーシェリアスが「カプロスB・C・D・E! こっちよ!」と叫ぶと、少女を囲っているカプロスたちが一斉にアーシェリアスに視線を向ける。