少しでこぼこしたなだらかな坂や、不揃いな石の階段を上り続け、眼下に広がる青い海を見ながら歩くこと一時間。

足に疲労を感じ始めた頃、一行は森の中に入った。

太陽の光を遮る背の高い木々が生い茂る景色の中、鳥の鳴き声がアーシェリアスの耳に届いてくる。


「自警団に会わないな」

「この辺りではないところを捜索しているのかも。シーゾー、はぐれないようにね」

「モフー」


風が葉を揺らし、擦れ合う音を聞きながら辺りを見回すアーシェリアス。

青々とした自然あふれる匂いの中に、甘い匂いがしないかと本来の目的である幻の果実のことも気にしていた時だ。


「アーシェ、止まれ」


数歩前を行くザックが足を止め、辺りを警戒するように視線を走らせた。


「ど、どうしたの?」

「声がした」

「えっ?」

「……こっちだ」


アーシェリアスには聞こえなかったが、ノアの声だろうかと期待を膨らませてザックの後ろをついていく。

進むのは道なき道。

夕霧の崖は、夕刻になると霧に覆われることが多い為に付けられた名で、昨夜も霧が出ていたのか葉も土も露に濡れている。