どう見てもまだ若く独身だろうという雰囲気なので、まさか子供がいるとは予想外すぎたのだ。

「ノアという可愛い子なんだけど、ちょっと変わっているから友達がいない子なの。だからよくひとりで遊んでいるんだけど、昨日から夕霧の崖に行ったきり帰ってこなくて」

「昨日からですか!?」


小さな子がひとりで昨日から夕霧の崖から帰ってこない。

もし魔物にでも襲われていたらと考えて、アーシェリアスはノアの身を案じる。


「ここの自警団は? 動ているのか?」

「ええ、昨夜、仕事のあとに気付いて、その時にお願いしたわ」


町の自警団が捜索に動いてる。

しかしこれから自分たちが向かうのも夕霧の崖だ。

アーシェリアスはウエイトレスさんの手をがっしりと両手で包む。


「私たち、これからその崖に行くので捜索に加わりますね。いいかな、ザック?」

「ああ、かまわない」


頷いたザックの隣で、シーゾーも「モフッ」と張り切った様子を見せた。


「ありがとう! どうかよろしくね」


大きな胸を揺らしながら手を振って見送ってくれるノアの母に手を振り返し、夕霧の崖と表記されている案内版に従い崖に沿った小道を進んでいく。