(でも、目指す地によっては警備が届いていないところもあるのよね。幻の料理の情報次第では少し危険な場所に行く可能性があるってザックにも言われたし)


アーシェリアスが旅に出るきっかけは、破滅エンドから逃れるためだったが、旅の目的は幻の料理を作ること。

それはザックも承知していて、ここに至るまでの道のりで幻の料理に関する聞き込みもしている。

しかし、有力な情報は得られず、とりあえずファレ乙の主要人物と会って、下手にフラグを拾わないようにと、王都とは反対の南方へ進んでいる次第だ。


(さっきのウエイトレスさんか、マスターに話を聞いてみようかな)


少しでも情報をと、アーシェリアスが席を立った時だ。


「おやぁ? ヒック、なんだお嬢ちゃん。もしかして一緒に踊る相手を探してる、ヒック、のかぁ?」


アーシェリアスは木のジョッキを手にした中年の酔っ払いに絡まれた。

しゃっくり交じりに躍る相手と言われ店内の賑わいに耳を傾ければ、人々の笑い声に交じって音楽が聞こえてくる。

どうやら数名の楽団員がいるらしい。

奥の方では軽快なリズムに合わせてクルクルと回って踊る男女の姿が見えた。