──銅製のグラスを軽く打ち鳴らし、アーシェリアスは運ばれてきた料理に目を輝かせる。

ザックはその様子を眺めながら安堵してエールを喉に流し込んだ。

アーシェリアスのお眼鏡に叶う店はすぐに見つかった。

というのも、美味しいと評判のお店は知ってるかという話をしていたところ、たまたま聞いていた宿屋の主人が『それならブリーランって酒場に行くといい』と教えてくれたのだ。

そこの【ほろほろ肉のビーフシチュー】が最高だから一度食べてみてくれと。

ブリーランは宿屋からほど近い場所にあり、繁盛しているのか薄暗い店内はほぼ満席。

賑やかな声があちらこちらから聞こえてくる中、お待ちかねのビーフシチューがやってきた。


「お待ちどうさま! 当店自慢のビーフシチューよ」


テーブルに、ビーフシチューの入った木のスープボウルが二つ置かれる。

その瞬間、ほのかに香る赤ワインの華やかな香り。


「美味しそう!」


いただきますと、二人揃って口にしてからスプーンでシチューを掬う。

そして、火傷しないように気をつけながら頬張ったメアリは、頬に手を添えて喜んだ。


「んー! お肉がほろほろ!」


噛むとすぐにほろりと崩れる牛肉は、しっかりと焼いてから弱火で時間をかけて煮込まれているのがわかる。

野菜も固すぎず、かといって柔らかすぎもせず絶妙な歯ごたえで、ザックも満足げに口に運んでいた。