短い階段をいくつか上った先、最初に訪ねた宿屋の部屋がちょうどふた部屋空いていたので、そのままチェックインする。

ひとり部屋のベッドの上に荷物を置いたアーシェリアスは、窓の外が大分暗くなってきたことに気づき、シーゾーにビスケットをあげて寝かせてから隣に泊まるザックの部屋の扉をノックした。


「ザック、夕飯はどうする?」


時間はまだ少し早いが、どこか店に入るなら早めに動いた方がいい。

アーシェリアス的には、その土地にしかないメニューとの出会いも期待しているので、いい店があれば探したいのだ。

木製の扉が開いて、外套を脱いだザックが剣を片手に現れた。


「また店を探すのか?」

「街道の宿場町にはいいメニューがなかったけど、ここなら何かあると思うの!」

「……そう願う」


マレーアからこのシュタイルまでの間に寄った宿場町では、特にこれといった料理はなかった。

だが、だからこそアーシェリアスは納得がいかずに酒場や飯屋を探し回り、その間ザックは空腹に耐えながら付き合っていた。

今日こそはアーシェリアスが納得するメニューが早めに見つかることを祈り、ザックは部屋の扉を閉めた。