(本当はコーヒーも飲みたいんだけどなぁ)
ス〇バのコーヒーを懐かしく思いながらハーブティーの箱と一緒に並んでいるティーカップも可愛いなと眺めていた時だ。
ガラスに映る通行人の中にアルバートの姿を発見し、アーシェリアスは驚きに目を丸くする。
実は、つい三日ほど前にアルバートとは顔合わせ済みだ。
アーシェリアスより三つ年上のアルバートは、姿こそまだ幼さが残るものの、態度はすでに俺様として出来上がっていた。
『お前がレディ・アーシェリアスか。僕の花嫁になれることを誇りに思え』
尊大な態度でそう告げられたのは、別にふたりきりになったからでもない。
互いの父が互いの子を紹介してすぐのことだった。
アーシェリアスの父は一瞬真顔になったもののすぐに笑顔で取り繕っていたが、帰りの馬車内では『何かあれば、いつでもこの父に相談しなさい』と言われている。
ここで見つかると俺様な態度で絡まれるかもしない。
なるべく関わり合いになりたくないアーシェリアスは、手に持っている差し入れの入った籠を抱きかかえるようにし、紅茶専門店の横に伸びる裏路地へと入った。



