破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

その相手は主人公ミアのことを指しているのだが、アーシェリアスが断りたい大きな理由が別にある。

それは、ミアが現れた場合、アルバートルートに入ってしまうと悪役令嬢ポジションのアーシェリアスは婚約破棄されるだけでなく不敬罪を言い渡され国外追放となるのだ。


(自分だけがそうなるのならかまわない。でも、伯爵家の令嬢が追放となれば、家名にも傷がついてしまう)


自分のせいで父が苦労するのは嫌だった。

そして何より、兄であるレオナルドの未来を傷つけたくはないのだ。


(推しの未来は私が守る!)


決意も固く思案する父の様子を見守る。


「……わかった。では、アーシェの意志を尊重し、返事をしよう」

「ありがとうございます! お父様!」


これでルーヴ家の未来は安泰だと胸を撫で下ろしたアーシェリアスだったのだが。

──夕食後、帰ってきた父からの報告にアーシェリアスの思考も動きもフリーズした。


「サイフリッド公爵が、縁談を断ったアーシェに興味が出たらしく、その相応しい相手はきっとお前だということで許嫁にしたいと」


これ以上断れば両家の関係も悪くなる。

申し訳ないが、家の為にも了承してほしいと父から頼まれてしまい、アーシェリアスは仕方なく頷いた。


(子が勝手なら親も勝手! これはもう、ミアが現れたら全力で別の人のルートに入ってもらわなくちゃ!)


密かに拳を作り、心中で闘志を燃やすアーシェリアス。

その夜、アーシェリアスは残ったスコーンを鷲掴みやけ食いしたのだった。