破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします


「俺の心にいるのは、今も昔もアーシェだけだ」


だから、渡したくないとでも続くように、ずっと繋いでいた手に力を籠める。

それは、ヒントというより最早告白に近いもので、アーシェリアスは顔が一気に熱を持つのを感じ慌てて俯いた。


(ああ……やっぱり私、ザックのことが好きなんだ)


向けられた言葉が嬉しくて、体中を幸福感が満たしていく。

いつの間に惹かれていたのか不思議だけれど、この胸にある想いは確かに恋と呼ぶもの。

何か言葉を返さないとと顔を上げるも、ザックの視線が逃げるように逸らされてしまう。

だから、アーシェリアスも素直に想いを伝えられず……。


「おやきじゃなくて?」


いつもの調子で茶化してしまったのだが、ザックには心地良かったのか、はにかんでアーシェリアスと視線を重ねる。


「……否定はしない」


互いに照れを隠し、けれど繋がれた手の指は想いを伝え合うようにしっかりと絡められた。


「明日は栗の餡子でおやき、作ってみるね」


ザックの為に、いつもとはちょっと違う特別な愛情を込めて。

厩舎への道すがら、嬉しそうに微笑んだザック。

明日からの旅は、今までよりも少し刺激に満ちたものになりそうだと、仲間と合流する際に繋いだ手を隠しながら、ふたりは微笑みを交わした。





【FIN……?】