破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします


「明日、うまくいくといいな」

「うん。ゆらたま亭とお客さんの為に愛情込めて作るよ!」


ゆらたま亭の人たちの力になれるように、食べてくれる人たちが少しでも喜んでくれるように。

うまくいくようにと胸中で願いながら、濃紺の夜空で輝く星々を見上げるアーシェリアス。

つられてザックも星空を見上げると、「愛情、か」と零し、以前から疑問に思っていたことを口にする。


「アイデアも愛情から湧くのか?」

「え?」

「アーシェの作る料理は変わったものが多いだろう? 異国の文字も読めるようだし、他国の料理を参考にしてるのか?」


本当なら、詮索はあまりしたくないと考えていた。

アーシェリアスが、異国の文字が読めることをはぐらかしたことがあったからだ。

自分も王子であることを隠している。

誰にでも触れられたくないことはあるだろうと、あまり突っ込まないつもりでいた。

けれど、今こうして訊ねてしまったのは、ザックが自分の立場を明かしたからではなく、純粋に知りたいと思ったからだ。

アーシェリアスを、もっと知りたいと。

そして、この衝動がどこからくるかものなのか、そのきっかけがある男のせいなのもザックは自覚している。


(……諦めるのは、得意だったはずなのにな)