破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

実は、温泉から戻った際にノアの荷物がすでに無くなっていたのは気付いていた。

きっとザックたちの部屋に移動させたのだろうと予想したのだが、その際、自分の荷物しかない部屋を見て寂しく感じたのだ。

ノアと部屋で過ごす時間は、修学旅行の夜のように楽しかったから。


「怒ってないのか?」


寂しがるアーシェリアスの横顔に、ザックが不思議そうに問いかける。


「驚いたけど、怒ってはいないわ。ザックの時と同じよ」


ザックがファーレン王国の王子であると知った時と変わらない。

身分や性別が知っていたものと違っていても、否定することはないのだ。


「性別はオプション。女の子でも男の子でも、ノアちゃんはノアちゃん。あ、でも一応ノアくん、の方がいいのかな」


でも、あの可愛さと恰好でノアくんもおかしいかなと悩んでいると、ザックが一笑する。


「ノア、でいいんじゃないか?」

「そうだね」


性別で分けたりせず、”ノア”という人として呼ぶのが一番いいと、ふたりは微笑み合った。