破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

いくつものキャンドルが照らす庭の中央には、石造りのガゼボがあり、アーシェリアスは屋根の下に設置されている木製のベンチに腰かけた。

柔らかなオレンジ色を纏う庭の景色を眺め、優しく通り抜けていく風を火照った体に感じていると、ザリ、と砂を踏む音が聞こえてアーシェリアスは視線をそちらへやる。


「ここにいたのか」


やってきたのは、ゆったりとした白いシャツを羽織ったザックだ。

アーシェリアスはザックの顔を見た途端、脱衣所で見た逞しい上半身を思い出し、頬を赤らめてしまう。

対して、ザックも必死に下着姿を隠すアーシェリアスが脳裏に浮かんでしまい、気まずそうに一度視線を逸らしたが、「隣、いいか?」と遠慮がちに訊ねた。

恥ずかしさはあるものの断る理由はないので、アーシェリアスが小さく頷くと、ザックはそっと腰を下ろして足元のキャンドルを見つめながら口を開く。


「ノアが反省してたぞ」

「うん……」

「今後はちゃんと、俺たちと同じ部屋にすると言っていた」

「そっか。部屋、広くなっちゃうなぁ」