(はぁ……なにがなんだか)
再び吐き出された息に、立ち昇る湯気がアーシェリアスの戸惑いを乗せて揺れる。
あまりの慌ただしさにまだ少し心が落ち着かないが、ノアが男の子だという事実はハッキリしているのだ。
(完璧、ノアちゃんを女の子だと思ってた……)
けれど、思い返せば着替える時、ノアはいつもアーシェリアスに背を向けていたり、衝立があれば隠れていた。
アーシェリアスは令嬢として育っているのもあり、嗜みとして気を使って過ごしてはいたが、ノアの場合は男だという理由からだったのだろう。
ノアの母が変わった子だと言っていたのも、女装しているからという意味があったのかもしれない。
(それにしても、知らなかったとはいえ……恋人でもない男の子と同じ部屋に寝泊まりしてたなんて)
女同士だからと思って見せすぎてしまったところもあったかもしれないと、羞恥にまた深い息を吐き出したアーシェリアスは、心からのリフレッシュとはいかないまま、のぼせる前にと湯から上がった。
そして、一度は部屋に戻ったのだが、明日のデザート大作戦でいい成果を出せるかという緊張もあり落ち着かず、気晴らしにと宿の庭に出て涼むことにする。



