破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします


「ひ、ひゃあああああ!?」


悲鳴を上げ、アーシェリアスは慌てて籠に置いてあった白いバスタオルを手繰り寄せ体を隠した。


「アハッ、ごめんね? もう見ちゃった。あっ、でも、アーシェの嫌がることはするつもりないし、ボクが男だって気づいてくれなかった罰ってことで許してね」


謝罪を口にしたノアだが、悪びれた様子は見られず、それどころか笑みを浮かべて許しをねだられる。


「ば、罰って……」


そもそも、ノアが男だと気づける者がこの世にどれだけいるだろうか。

もしや、ザックやエヴァンは気づいていたのかと自分の鈍さを疑った瞬間、脱衣所と廊下を繋ぐ引き戸がスパァン! と勢いよく開いた。

驚きが立て続けにやってきて対処しきれなくなってきたアーシェリアスと、何事かと目を丸くして背後の扉を振り返るノア。

ふたりの視線の先には、中途半端にボタンが外されたダークグレーのスリムパンツを履き、ほどよく筋肉のついた逞しい上半身を露わにしたザック。