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カリドは聖なる森と呼ばれる魔物が寄り付かない森林に囲まれており、豊かな自然に空気も澄み、避暑地としても人気の高い温泉地だ。

雪が融け、冬から春へと気候が穏やかになる今くらいから繫忙期を迎えるらしく、カリドに到着した一行は厩舎に馬車を預けるところから早速その洗礼を受けた。


「たっか! 厩舎に一泊預けるだけで五千ゴールドもするなんてありえないでしょーっ」


相場以上の金額を支払わされ、少々ご立腹のノアにエヴァンは「王都ではもっとかかる厩舎もあるぞ」と語る。


「そりゃあ貴族様方が使う厩舎だしぃ? 設備のいい厩舎で高級な餌とか食べさせてるからだろうけどぉ? 温泉はさ、湯治とかで遥々遠い地から来る人たちもいるんだから、いっくら繫忙期でも値段は上げちゃいけないと思うんだボクは!」


ここは王立警備隊の駐屯地が近いので、怪我の治療や疲労を癒しに来る騎士や兵も多いのにと、カリドの町長に物申す勢いで意見を述べるノアだが、財布の紐が堅いのには理由があった。

実はノアの母は金遣いが荒いのだ。

貯金をするということができず、酒場で働いた給金もあればすぐに使ってしまう。

なので、物心つくようになってからはノアが家のお金を管理していた。