「それは上手くできてないから俺が自分で食べる」
寄こせと手を差し出したザックだったが、アーシェリアスは首を横に振った。
「料理は形じゃなくて心だって、私の母がよく言っていたの。ザックが一生懸命作ったおにぎり、食べさせて」
アーシェリアスは微笑んで言うと、ザックが苦戦して握ったおにぎりをかじった。
お米の旨味と海苔の香ばしさが噛むたびに口の中に広がる。
前世ではよく莉亜も食べていたし、小料理屋でも何気に注文も多かったおにぎり。
コンビニやスーパーでは、様々な種類のおにぎりが売っていたのを思い出しながら飲み込む。
「うん、美味しい。塩加減もバッチリだよザック」
「そ、そうか。良かった」
不安そうに見守っていたザックは、褒められてほんのり頬を赤く染め胸を撫で下ろした。
その横では、ふたつ目のおにぎりを手に取ったエヴァン。
気に入ってもらえたのを嬉しく思い、アーシェリアスが「この中に具を入れても美味しいんですよ」と話すと、エヴァンは「例えば?」と首を傾げた。
「えっと、鮭や梅干し、おかかに佃煮、ツナマヨや……あ、この唐揚げも!」
アーシェリアスの説明にザックが「おか……つく?」と頭に疑問符を浮かべる。