(あの時、俺は初めて王子で良かったと思えた。アーシェの力になれたことが嬉しかった)
これからもアーシェリアスの力になりたいと願うと、ザックは先ほどから複雑そうな顔で黙りこくっているノアにも確認を取る。
「ノアも、今まで通りに接してくれるか」
「……ひとつだけ確認。ザックがアイザック王子であることで、アーシェやボクが危険にさらされることはない?」
例えば刺客に狙わるとか。
はたまたアイザック王子に何かあった時、自分たちに濡れ衣を着せられる展開になるのでは、など。
地位が高いほどトラブルの程度も大きくなるのは想像に難くない。
ノアが心配するのは当然のことで、ザックは仲間にはできる限り正直でいたいと思い答える。
「王族であれば権力争い等トラブルがないとは言い切れない。過去、今は亡き父の兄君も、毒殺されている。疑いをかけられた従者たちも皆処刑された。だが、そうならないよう最大限の努力をすると約束する」
強さを露わにした瞳で語るザックに、口先だけだと反発することはノアにはできなかった。
信じたい気持ちはあるが、ここで下す判断が間違っていた時、後悔しても遅いのだ。
しかし、アーシェリアスは違った。
「いいよ、約束なんてしないで。もし危険が迫ったとしてもかまわないわ」
言い切ったアーシェリアスの瞳に揺らぎはない。



