「えっ、ホントに王子様なの!?」
「……だとしたら、どうする」
ザックがファーレンの王子だとしたら。
アーシェリアスは逡巡し、ジッと答えを待つザックを見つめた。
「どうもしない……と言ったらいけないかしら。おやきが大好きで、デリカシーがなくて、だけどとても頼りになる私の大切な旅の仲間だって思っていてはダメ?」
王子ならば、関わり方を変えなければいけないのが普通だ。
馴れ馴れしく名を呼ぶことなど言語道断。
旅に出ているのは理由があるのだろうが、ザックは自由を求めている。
縛られることを望まないザックに、王族という簡単には外れない足枷がついていることを意識させたくない気持ちがアーシェリアスにはあった。
何より、王子だからと変な距離を作らなければいけないのは、すごく寂しいことだと感じた。
「王子だろうがなんだろうが、私の中でザックはザックだわ」
アーシェリアスの言葉に、ザックが嬉しそうにはにかむ。
しかし、王子として扱わないことを快く思わないエヴァンが眉根を寄せた。
「王子ではなく旅の仲間? ダメに決まっ」
「いい。それがいい。俺はザックで、アーシェを守ると誓った旅の仲間だ」
「アイザック様!」
「うるさい。エヴァンは少し黙っててくれ。王子はちょっとしたオプションだ」
王子オプションは必要なタイミングで必殺技のように使えばいい。
アーシェリアスが自由を勝ち取る為、手助けした時のように。



