破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

──すべての買い出しが終わり、一行はいよいよ洞窟へ出発することになった。

ザックとノアには先に馬車に乗ってもらい、アーシェリアスは厩舎の支払いの為に厩舎番のいる支払い口に立とうとした時だ。


「アーシェ?」


可愛らしいソプラノの声に呼ばれて、アーシェリアスは足を止める。

そして、振り返った先にいる者の姿に目を疑った。


「ミ、ミア……」


まさかこんなにも早いうちに、再会し、その名を口にすることになるとは思わなかったアーシェリアスは、固まってしまう。


(嘘でしょう!? 今日って運勢最悪の日なの?)


アーシェリアスの長い黒髪が風に揺れると、ミアは金色の髪を嬉しそうに弾ませて小走りに近づいてきた。


「偶然ね! 会えて嬉しいわ」

「わ、私も嬉しいわ。どうしてここに?」


北の王都方面なら貴族たちの別荘も多いので出会うことはあるかもしれないがと困惑を隠し笑顔で問いかける。

すると、ミアは一瞬だけ歪んだ笑みを見せてから、そんなものは見間違いだったような天使の微笑みを浮かべた。


「実はね、アルバート様にどうしてもと誘われて旅行中なの」