破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

ザックがどこの誰か、なぜアーシェリアスと旅をしているのか。

アーシェリアスを、どう想っているのか。

ノアは、ふたりをあまりにも知らなかった。


(それでも……この人ならって思えた)


だから、一緒に旅に出たいと役に立ちたいと思ったのだ。

ノアは、アーシェリアスに渡そうとしていたプレゼントをポケットにしまう。

お礼のつもりだったし喜んでほしかった。

けれど、今は渡せないと、ふたりの様子を見て感じてしまった。


「いつか、ボクを見てくれるように頑張ろう」


プレゼントを渡すのは、気持ちを整理して、もう少し努力を重ねてから。

タイミングを間違え嫌われたりしないようにしなければと慎重に考えて、ノアは大きく息を吸うと笑みを作って踏み出した。


「ふたりともー! ボクを仲間外れにしないでよー」


ノアの声にアーシェリアスとザックが視線を向ける。


「あ、ノアちゃん! おかえりなさい。どこに行ってたの?」

「あー、うん。探し物してたんだけど、見つからなかったんだ。それよりふたりで何してるの? ボクも混ぜて!」


ホロの下に乗り込んだノアは、おにぎり以外は完成している料理が詰まった箱を見て瞳を輝かせた。

ランチボックスにしてはなんだか様子が違う。

パンやサンドイッチが入ってるわけでもない。

だが、見た目はノアの心をくすぐった。


「わぁっ! ハートとお花がいっぱいで可愛い~」


本当はふたりに驚いてほしかったのだが、一緒に作るのも楽しいと思い、アーシェリアスはノアにもおにぎりの握り方を教えて三人でお弁当を仕上げたのだった。