(そうだ。同棲してるカップルみたいなやつ! ……って、いや、ザックはそういうのじゃないから!)
心の中で突っ込んで、けれど笑って否定できない自分がいることにも気が付いてアーシェリアスは頬を染めてしまう。
幸い、ザックはおにぎりと格闘していてアーシェリアスを見てはいない。
シーゾーもザックの応援に必死だ。
ホッと胸を撫で下ろし、あまり深く考えるのはやめようと密かに深呼吸して、アーシェリアスは四つ目のおにぎりを完成させた。
……そんなふたりの様子を、少し離れた場所からノアは見ていた。
アーシェリアスの頬に朱色が差し、ザックを横目でチラッと確認していたのもしっかりと。
(アーシェはもしかしてザックのことを……?)
新参者の自分は、アーシェリアスとザックがどんな風に出会ってどういう経緯で旅に出たのかは知らない。
知っているのは、旅に出る前の自己紹介で、アーシェリアスが実は令嬢であり、家族を説得して幻の料理を求め旅に出たということ。
それから、旅をしていたザックはアーシェリアスを危険から守る為に共にいるのだということのみ。



