破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします


「じゃあ、まだおにぎりが全部できてないからお願いしようかな」


まだひとつしか握れていないおにぎりを指差して示すと、ザックは興味深そうに見ながらコクンと頷く。


「わかった。教えてくれ」

「じゃあ、まずは……」


……と、アーシェリアスが一緒にやってみせながら教えたのだが。


「……なぜ崩れるんだ」


握るたびにザックの手からボロボロとご飯が零れ落ちて行く。

逃げるように手から落ちようとする白米を必死に集めてまた握るのだが、次第に形が崩れてしまうのだ。

慣れた手つきでおにぎりを握りながら、アーシェリアスはクスクスと笑う。


「力を入れすぎなんだよ」


こうだよ、と優しくしかし絶妙な力加減で形を三角形にしていくアーシェリアス。


「料理って難しいな……」


ザックが眉を寄せると、またアーシェリアスは笑った。

そして、こうしてザックと一緒に過ごす時間が楽しくもあり心地良いと感じている自分に気付く。


(なんていうのかなこういうの……)


家族というにはまた違う感覚で、あてはまる関係性は何かと考えた時、ひとつ思い当たった。