「でも、プリムラってファーレンではあまり見ないわよね?」

「これは北のネレーゲン公国のような寒冷地に多く咲く花だからな。ネレーゲンは他にもファーレンにない草花が結構あるんだ」

「そうなのね! ザックはネレーゲンには行ったことがあるの?」


詳しかった為、もしかしたら実際に目で見てきたのではと思い聞いてみるとザックはひとつ首を縦に振った。


「ああ、式典とかで何度か」

「式典?」


式典とは一体どんなものか。

アーシェリアスが知るネレーゲン公国の式典であるならば、パレードか何かに参加しに行ったのだろうかとアーシェリアスが首を捻った瞬間、ザックは固まった。


「ザック?」


名を呼ばれ、ザックの目が泳ぎ始める。


「どうしたの?」

「あー……いや、それより大変そうだな。俺も手伝うぞ」

「え? でも、ザックって料理できるの?」

「……できないが、できることを手伝う」


はぐらかされたのをなんとなく察しながらも、アーシェリアスは特に追及することはやめてザックに合わせた。