「何を作ってるんだ?」
「……お弁当よ」
アーシェリアスの声がそっけないことに気付き、ザックはやはりまだ機嫌が直っていないことを悟る。
そして、後ろ手に隠していたものをずいっとアーシェリアスへと差し出した。
「これ、もらってくれ」
「えっ……!?」
いきなり現れたピンクと白の花束に、アーシェリアスは目を白黒させる。
しかし、バラに似たその可愛らしい花がプリムラだということに気付いた瞬間、目を輝かせた。
「ありがとうザック! これでお弁当がさらに華やかになるわ!」
「……は?」
「これは食用の花でね、飾りつけには最適なのよ」
「食用……」
野菜のように食べられるエディブルフラワーのプリムラ。
そうとは知らずに花売りに勧められて購入したのだが、思い返してみれば『どんな方に贈るんですか』と訊ねられ『料理が好きな女性だ』とザックは答えた。
もしかしたら花売りも役立つと考えて選んだのかもしれない。
(……というか、デリカシーがないのはどっちだ)
お詫びのプレゼントのつもりで渡したのに、まさか料理の小道具にされるとは。
しかし、楽し気に箱に料理を詰めて飾り付けて行くアーシェリアスの顔を見て、ザックは満足気に目尻を下げて微笑んだ。