車が楓の前に停まった。
「おまたせ、待った?」
車の運転席から、キレイな女の人が出てきて、
楓に話しかけた。
「うん、5分くらい」
「5分は待ったって言わないから。
ん、早く乗って」
「サンキュ」
その時、とても近くにいた私には、
見えてしまった。
楓の左薬指の指輪を。
その手を彼女と繋ぐところを。
落ち着け、自分。
ドクン、ドクンとさっきの倍くらい胸がうるさくなる。
きっと、婚約者なんだろう。
あんなキレイな女の人をもう捕まえてても、楓なら
驚かない。でも、私は深くショックをうけた。
やっぱり、あの時から私は1度も諦めたことが
無かったのかもしれない。
私の目の前を彼女の車が通り過ぎて行った。
コツ、コツとゆっくりと歩を進める。
行きのように心地よくはなかった。
ああ、あのとき、諦めていなかったら。
気持ちをちゃんと伝えていれば。
こんな後悔しなかったかもしれない。
もう今じゃ遅いんだ。
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