でも、それからもう11年。
今日私は教師の初出勤日。なんとなく、
楓を思い出した。彼も、教師が将来の夢だったからかな。
コツコツとコンクリートをうつ音が心地いい。
キィ
児童玄関と違って少し古い
職員玄関の扉をひらく。
まだ春休み中の校内は、驚く程に静かだった。
職員玄関のすぐ前の職員室に
靴を履き替えて入る。
ガララララッと横滑りのドアをあけて
自分の机へと向かう。途中に、これから同僚なる先生達と
挨拶を交わした。自分の机は少し年季の入った、でも
小綺麗な机だった。
「さて、新任の先生方も揃ったことですし、
挨拶をはじめましょうか。」
熱血そうな校長先生が重そうに腰を上げた。
「では、 1年1組の担任からお願いしますね」
「っはい。」
多少驚きながら、椅子を引いて立つ。


