体も脳も沸点に達し口からため息にも似た声が漏れると、逢坂社長は腰に回していた腕をやんわりとほどいた。
「親や伯母たちの目を欺くために、俺たちは偽りの恋人を演じる。こういうことは計画的にやらないと、後で痛い目を見るからな。わかるか?」
嫌じゃないと言ってしまった手前、仕方なく小さく頷く。
偽りの恋人──。
その言葉に、胸の奥がズキンと痛んだ。
これって全く脈なしって言うことだよね?
そりゃあ私だって、お見合いは二度とごめんだ。
私は私の人生を謳歌する。自分の人生は自分で決めたい。それが結婚ならば、尚更というもの。だから逢坂社長の言うことは、悪い提案じゃないんだけれど……。
少し前に失恋が決定的になったというのに、この期に及んでまだどこかにチャンスがあるんじゃないかと心の隅で思っていたから、偽りとか言われちゃうとかなり複雑な気分。
まったくもって往生際が悪い。


