ん、あれ?

 いつもならこんなとき、攻撃的な態度を見せて言い合いになるのが常なのに。どうしちゃったの? しかも顔がちょっと赤いような……。

 体を少し横に倒して、逢坂社長の顔を覗き込む。

「社長、どうかしたんですか?」

 珍しい逢坂社長の反応に、声を掛けた。

「ん? いや、別に何も……」

「でも顔が赤いですよ。もしかして、気分でも悪いですか?」

 逆にちょっと心配になってそう言うと、逢坂社長の顔はますます赤くなる。

「お前が鈍感で助かったよ」

 逢坂社長は心底助かったというように大きなため息をつき、水が入ったコップを手にするとそれを一気に飲み干した。

「鈍感、ですか?」

「ああ、鈍感。でも逆に、これからが楽しみだな」

 楽しみ? 何が?