珍しく根負けした逢坂社長が、呆れたように大きなため息をついた。
「高坂、お前は本当にバカだな」
「バ、バカって……」
「ここは料亭だぞ、冗談に決まってるだろう。それに……」
逢坂社長は一旦言葉を切ると、私から目線を外した。
「いや、なんでもない。早く食べろ」
「なんですか、それ」
「なんでもないって言ってるだろう。ごちゃごちゃうるさいこと言ってると、マジで脱がすぞ」
「ぬ、脱がす……」
男の人から言われたはじめての言葉に、ぽかんと口は開いたまま。
逢坂社長って、こんなこと言う人だったの? 会社での社長とまるで別人じゃない! 上から目線で傲慢なところがあっても、真摯で誠実な人だと思ってたのに……。
慌てて着物の胸元に手を当て身を護るようにギュッと掴むと、逢坂社長をキッと睨みつける。でも社長は目をそらしたまま、口に手を当て何かを考えているのか、私の方を見ようとはしない。


