逢坂社長のことをぼんやり見ていると、座卓の向こうから右腕を伸ばした社長が、私のおでこをピンッと弾いた。
「イッた!! ちょっと社長、何でデコピンするんですか!」
「人の顔、ジロジロ見すぎ。何、俺に幸せにしてほしいとか考えてた?」
「うっ……」
そう言って逢坂社長は、真剣な眼差しを私に向ける、その視線から逃げるように、慌てて顔をそむけた。
勝手に人の心の中を読むなんて、言語道断、もってのほかだ。
今日の社長は、どうかしてる。見たことのない顔をするし、喋り口調もいつもと少し違う。どういうつもりでこの場に来てるか知らないけれど、私をからかうつもりだけならさっさとそう言ってくれればいいのに。
それでなくても慣れない振袖で自由に動けないし、ギュッと締めた帯は息苦しい。いつもの私だったらこんなとき、文句のひとつやふたつ軽く言い返せるのに、今日はそれがうまく出てこない。
調子が狂うじゃない……。


